はじめに
「商品モックは“物撮りが正義”」——数年前までの私もそう思っていました。照明、レフ板、背景紙、三脚、そして終わらないレタッチ……。でも2025年の今、Photoshopの生成塗り(Generative Fill)とAdobe Fireflyを正しく組み合わせると、撮らずに作るが現実的な選択肢になります。しかも、ただ“それっぽい”ではなく、販促に耐える見栄えまで持っていける。初回の学習コストを超えると、制作速度は体感で数倍になりました。
生成塗りは最新のFireflyイメージモデルと連動し、フォトリアル品質や複雑プロンプト理解が強化されています。Photoshop標準のワークフローから、選択→生成→差し替えが直感的にできる点も魅力です。
AIモックアップ作成の革命!「生成塗り」が物撮りを超える理由
物撮りの「つらい」をAIが一気に解決
- 時間:光回し・セッティング・微調整で半日消える → 生成塗り+プロンプトで数分~数十分。
- コスト:スタジオ/機材費・小道具購入 → ゼロ~最小限。
- 再現性:同じ条件で撮り直すのが難しい → プロンプトとレイヤーを流用して再生成。
- パターン展開:色替え・背景替え・季節替え → バリエーション生成で一気に展開。
とくに色展開とシーン差し替えは生成塗りが圧倒的に得意。Photoshopは生成塗りを含む生成AI機能を、初心者でも扱える前提で設計しており(選択→プロンプト→生成)、検証‐やり直しのサイクルが速いです。
既存モックアップ素材との決定的な違い
- テクスチャ適合:既存のPSDモックは想定素材に最適化されていることが多い。生成塗りは“現物の凹凸・歪み”に合わせて馴染ませるのが得意。
- 背景と光:テンプレ背景の“浮き”が出にくい。生成背景や生成の影/反射まで一体で作り込める。
- 制約の少なさ:テンプレに寄せるのではなく、商品やブランド側の世界観に合わせられる。
生成塗りはPhotoshopの既存機能(選択/マスク/調整/コンテンツに応じた塗りつぶし)とも併用でき、AIと手動の“いいとこ取り”がしやすいのも強みです。
【3STEP完全ガイド】生成塗りでモックアップを秒速量産する方法
STEP1:素材を用意!「貼り付けたい画像」と「土台」の選び方
土台(ベース写真)は、
- 商品の最終用途に近い構図(ECサムネ、LPのヒーロー、SNS正方形など)
- 光の方向がはっきり分かるもの(影を足しやすい)
- 背景がうるさ過ぎない(生成の整合性が取りやすい)
貼り付けたい画像(デザイン面)は、
- 正面/展開図/ロゴのSVGや高解像PNGを用意
- 実寸感を損ねないよう、物理サイズと解像度を意識
- 可能ならハイライト版/影版も別出力(後でブレンド)
私の定番は「角丸ステッカー」「Tシャツ胸ロゴ」「ボトルラベル」「パッケージ全面」。初回だけ丁寧にテンプレPSDを組んでおけば、その後は差し替えが秒で終わります。
STEP2:Photoshopの「生成塗り」でテクスチャを置き換えるコツ
- 商品面を選択(ペンツール/オブジェクト選択)
- 生成塗りを起動 → プロンプトに「貼りたい素材の質感/印刷方式」を端的に書く
- 例)
matte vinyl sticker with slight edge lift - 例)
silkscreen logo printed on cotton fabric, slight fiber bleed
- 例)
- バリエーションから最も馴染む結果を採用(気に入らなければ再生成)
- 変形(ワープ)で曲面に沿わせる/レイヤーマスクでエッジを整える
- 描画モード(乗算・オーバーレイ)で下の織り目・凹凸を透かす
Fireflyの最新モデルはフォトリアル品質や複雑プロンプトの理解が向上しており、繊維/紙/プラ/金属といった素材感の再現度が高いです。
STEP3:Fireflyで「背景&ライティング」を最適化する神プロンプト
狙いは「商品が主役で、世界観が伝わる」背景。Fireflyで生成→Photoshopに持ってきて合成する流れが速いです。
- 例1:
soft daylight studio background, light gray seamless, subtle gradient, shallow depth of field - 例2:
minimal wood tabletop near window, morning light, soft shadows, lifestyle but uncluttered - 例3:
dark moody backdrop, rim light from left, product photography style
FireflyはContent Credentialsが自動付与され、生成メディアの透明性向上にも役立ちます(必要に応じて書き出し時に情報を付加)。
プロの仕上がりへ!モックアップを「リアル」に見せる調整テクニック
- 影の方向を合わせる:ドロップシャドウではなく、柔らかいブラシで手描き→ガウスぼかし→不透明度調整。床面には接地影、背面には接触影を。
- 反射/光沢:商品表面に微弱ハイライトを加える。金属・ガラス系は環境反射(ぼかし)を薄くのせる。
- 色温度の整合:背景と商品の色温度(WB)を揃える。商品だけ暖色/背景が寒色だと“合成臭”が出やすい。
- 粒状感:仕上げに微粒ノイズを薄く全体へ。レンズの“空気感”が乗って馴染む。
- 微ブレ:完璧にシャープだと違和感。被写界深度を意識しフォーカス外は1~2pxぼかす。
実案件では「見せたい材質の気持ちよさ」を最優先。木目や綿織り、エンボス加工など触覚を想像できる程度に誇張するのがコツです。
【りむ失敗談】初挑戦でありがちな「AIが変なものを生成しちゃう」あるある
- ロゴが二重化:生成塗りのバリエーションで“余計な柄”が混ざる → マスクでロゴ形だけ残す or 素のロゴを最前面に合成。
- 歪み過多:曲面フィットでロゴが崩れる → 自由変形→ワープの分割数を増やして微調整。
- 影が嘘:背景と商品で光源が食い違う → 背景を再生成 or 一方向の影に統一。
- 質感が合わない:
glossy指示のままマット紙に → プロンプトを“matte”“uncoated”へ変更して再生成。
何度か回すうちに“AIに伝わる言い回し”が掴めます。ここが最初の山。
合成感を消す「影」と「反射」の簡単な足し方
- 新規レイヤー(乗算)→ソフト円ブラシで接地影を描く→ガウスぼかし。
- 商品輪郭の反対側に薄い“縁の反射”を描く(スクリーン)→不透明度10~20%。
- 床や壁の接触面に“にじみ影”を加える。エッジは硬すぎないのが正解。
生成AIモックアップの「落とし穴」と対策
著作権と商用利用は大丈夫?クリエイターが守るべきガイドライン
- Fireflyは商用利用を想定した設計(Adobe Stock/オープンライセンス/パブリックドメイン等を主訓練に安全性配慮)。ただし商用利用の定義は「販売・販促などの営利活動全般」。用途に応じて自分の契約プラン・生成クレジット・許諾範囲を確認。
- Generative Credits(生成クレジット):Firefly搭載機能の利用にはクレジット消費が発生。標準/プレミアム相当の機能で消費ルールが異なる。プランにより“標準は無制限+プレミアムのみ消費”の組み合わせも。
- クレジットとStockの違い:Adobe StockのクレジットはFirefly生成には使えない。別体系。
- Content Credentials(コンテンツクレデンシャル):FireflyやPhotoshop生成メディアには生成履歴メタが自動付与可能。透明性・帰属表示・トレーサビリティを高められる。必要に応じて書き出し時に付与/非付与を選ぶ。
- 学習拒否(トレーニングプリファレンス):自作コンテンツを他の生成AIに学習させたくない場合、Content Authenticity(Beta)で学習・使用拒否の意思表示を設定可能(Fireflyや一部サービスが尊重)。
重要:第三者のロゴ/意匠/著作物を含むモックは、権利者の許諾がない限り公開・販売NG。AIが生成したから安全、ではありません。自社・自分の資産だけで組むのが基本です。
AIに頼りすぎない!最後の仕上げは人間の目で行う
AI生成は“素早いアタリ出し”と“再現性のある量産”が本領。最終のクオリティ判断(ブランドの声、質感の解像度、ロゴの読みやすさ、配色の心理効果など)は人の審美眼が不可欠です。
Photoshop側も生成塗りの改良/Generate Similar/背景生成など進化が続いていますが、結果を編集・調整して作品に責任を持つのは制作者。ここを外さなければ、AIは“置き換え”ではなく強力な相棒になります。
まとめ
- 生成塗り×Fireflyは、商品モックの速度・再現性・拡張性を跳ね上げる。
- STEP1–3(素材選定→生成塗りで馴染ませ→Firefly背景&光整合)で物撮りゼロでも説得力のあるビジュアルに。
- 仕上げは影・反射・色温度・粒状感の4点で“合成臭”を消す。
- 権利と商用利用は常に確認:生成クレジット体系/商用定義/Stockと別枠/Content Credentials/学習拒否設定を理解しておく。
- 最後は人の目。AIの出力を編集して責任を持つ姿勢が、ブランド価値と成果物の信頼性を守ります。


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