はじめに:イラスト副業、本当に稼げるの?
「絵を描くのは好き。でも、お金になるのかな?」——イラスト副業を考えると、最初に浮かぶのはこの疑問だと思います。結論から言うと、稼げます。ただし、「何となく描いて待つ」だけでは難しいのも事実。稼いでいる人は、需要のある場所に、需要のある形で、需要のあるスピードで作品と自分を届けています。
多くのクリエイターが抱える期待は「好きなことで収入を得たい」。一方で不安は「自分の実力」「営業のやり方」「納期と本業の両立」「トラブル回避」「税金」。このガイドでは、初心者が最初の報酬を得て、継続的に伸ばしていくための実務目線の道筋をまとめました。テンプレやチェックリストも付けています。今日から手が動くように書きました。
最初は「自分にできるかな…」
私も最初は、SNSの「うまい人」たちを見ては凹み、ポートフォリオを開いては閉じ、見積もりのDMが来たら手が止まるタイプでした。最初の受注は小さなSNSアイコン制作。「安すぎたかな」と思いながらも、納期・ヒアリング・確認の流れを一つずつ整えたら、次の依頼が自然と来ました。振り返ると、実力よりも動線を整えたことが最初の一歩を押し上げてくれました。
【まずは知っておこう】イラスト副業で稼ぐための3つのマインドセット
1. 趣味と仕事は違うという意識を持つ
趣味は「自分が描きたいものを描く」。仕事は「相手が欲しい成果を、約束どおりに届ける」。
違いは目的・期日・再現性です。仕事としてのイラストは、クオリティだけでなく、ヒアリング→提案→合意→制作→納品→請求という一連の流れを再現可能にする仕組み作りが肝です。
2. 完璧を求めすぎず、まずは一歩踏み出す
最初から「神ポートフォリオ」「完璧な料金表」「映えるSNS」を狙うと、始まりません。最小構成で公開→改善を繰り返しましょう。
最小構成の例:
- 作品10点(得意ジャンル+案件想定のサンプル)
- 1ページのポートフォリオ(Notion/簡易サイトでOK)
- 料金の目安と納期目安(幅で提示)
- 依頼方法(フォーム or DMテンプレ)
3. 継続することが何より大切
副業は波が出ます。営業・制作・発信のリズムを小さく長く回すのが勝ち筋。週3本のSNS投稿、月2本のポートフォリオ更新、四半期ごとの料金見直し、のように「日・週・月・四半期」の頻度を先に決めると迷いが減ります。
【仕事の種類別】イラスト副業で稼げる主な方法5選
ここでは実際に受注しやすく、初期参入のハードルが低い順で紹介します。強み・始め方・単価感・落とし穴まで一気に把握しましょう。
方法1:スキルマーケットで受注(ココナラ、SKIMA など)
向き不向き
- 向く:個人向けアイコン・ヘッダー・立ち絵・グッズ用イラストを小回りよく提供したい人
- 不向き:長期大型案件や企業案件をメインにしたい人
始め方の最短ステップ
- 商品ページを3種類用意(例:SNSアイコン、立ち絵、表紙イラスト)
- 価格は3段階(ライト/スタンダード/プレミアム)に分け、オプション(商用利用・著作権譲渡・ラフ追加)を明記
- 制作フロー(納期・修正回数・納品形式)を図解か箇条書きで明確化
- 実績0のうちはレス速度で勝つ(質問への返信は1時間以内)
- 最初の10件はレビューの質を最大化(納期前倒し+丁寧なサポート)
単価感(目安)
- SNSアイコン:¥3,000〜¥15,000
- 立ち絵(腰上〜全身):¥10,000〜¥50,000
- 表紙・キービジュアル:¥30,000〜¥120,000
※相場は幅広い。まずは「時間×実力×希少性」で逆算し、赤字にならない最低価格を決める。
落とし穴
- 「修正無制限」で消耗(修正は回数 or 工数で上限設定)
- 商用利用範囲が曖昧(二次利用・グッズ化・AI学習の可否は先に明記)
方法2:クラウドソーシングで仕事を探す(クラウドワークス、ランサーズ など)
向き不向き
- 向く:コンペよりプロジェクト(指名)で、安定的に数をこなしたい人
- 不向き:単価を一気に上げたい人(最初は低単価の案件が多い傾向)
勝てる応募文テンプレ(短文版)
初めまして、〇〇と申します。◯◯系の実績(3件)があります。
ご依頼内容は「◯◯用途の◯◯イラスト」と理解しました。
提案:ラフ2案→本制作→微調整1回の計3ステップで、5営業日で納品可能です。
納品形式:PNG/SVG/PSD いずれも対応。著作権譲渡の可否は用途に応じ柔軟に対応します。
ポートフォリオ:◯◯(URL)
迅速なレス・丁寧な進行をお約束します。ご検討ください。
単価感(目安)
- 1枚イラスト:¥5,000〜¥50,000
- 書籍・WEB用イラストセット:¥30,000〜¥150,000
落とし穴
- コンペ消耗(参加回数を決める/指名案件に寄せる)
- 要件の曖昧さ(要件定義テンプレで先に枠をはめる)
方法3:SNSで仕事を受注(X、pixiv、Instagram など)
ポイント
- 見せる順番を設計:ヘッダー=強み、固定ポスト=依頼要項、ハイライト=実績
- タグ戦略:作品タグ+用途タグ(#Vtuber立ち絵 #同人グッズ #表紙イラスト)
- 投稿は「作品+作り方1ポイント」の教育ミニ要素を入れると保存率↑
問い合わせ導線
- 固定ポストまたはプロフィールに「依頼はこちら」のフォーム/DMテンプレを置く
- 返信SLA(目安)を明示:「当日中に返信します」など
単価感(目安)
- SNS経由は直取引=手数料0の代わりに、契約・請求の自己管理が必須。単価はスキルマーケットの1.2〜1.5倍を狙いやすい。
落とし穴
- DMでの口約束(見積もり書・合意メモへ即時切り替え)
- 炎上や盗用(透かし・低解像度公開・利用規約の固定)
方法4:オリジナルグッズを販売(BOOTH、SUZURI など)
メリット
- 在庫管理が少ない(オンデマンド可)
- 「作品=資産」化しやすい(ロングテール)
商品アイデア
- ステッカー/アクリルキーホルダー/Tシャツ/キャンバスアート/スマホ壁紙(DL)
- セット商品(例:ポストカード3枚+ステッカー2種)
売れるページの鉄板
- 1枚目の画像で世界観が伝わる(実物モック+使用シーン)
- サイズ・素材・注意事項を短文で上に、詳細は下に
- 数量限定・先着特典などの行動トリガー
落とし穴
- 原価と手数料の見落とし(最低利益額を先に決める)
- 画像の権利(フォント・素材の商用利用確認は必須)
方法5:ストックイラストを販売(Adobe Stock、PIXTA など)
向き不向き
- 向く:トレンド×量×継続が得意な人
- 不向き:一点物の受注で単価を上げたい人
勝ち筋
- 季節・ニュース・業界キーワードでシリーズ化
- 背景差分・配色差分で1案→複数バリエーション
- 検索キーワード(英語・日本語)の両対応
落とし穴
- 審査落ち(解像度・ノイズ・商標・人物権利に注意)
- 即金性は低め(半年〜1年スパンで積み上げ)
【稼ぐための第一歩】副業を始める前に準備すべきこと
その1:ポートフォリオを作成する
最小構成チェックリスト
- 作品10点(用途別に3カテゴリ:アイコン/立ち絵/表紙など)
- 役割の明記(ラフ〜仕上げまで担当/背景は別)
- 制作の意図(ターゲット・使用シーン)
- 納品形式(PNG/SVG/PSD、サイズ、色空間)
- 対応範囲(商用化、二次利用、グッズ化、AI学習可否)
- プロフィール(得意分野、納期目安、連絡可能時間)
- 依頼フロー(ヒアリング→見積→ラフ→本制作→納品→請求)
URLは1つに集約(Notion、ポートフォリオサイト、あるいは自サイト)。SNSプロフィール・固定ポスト・スキルマーケットの商品ページから同じURLに誘導して、迷わせない。
その2:SNSで積極的に発信する
投稿テンプレ(作品投稿)
- 1枚目:完成
- 2枚目:ラフ or メイキング
- 3枚目:拡大ディテール
- テキスト:作品の意図(誰に/どんなシーンで)+制作1ポイント+依頼導線
週の型(例)
- 月:完成作品
- 水:メイキング、ブラシ設定
- 金:依頼受付告知/実績紹介
- 土:ラフ量産配信(ライブ/タイムラプス)
その3:料金設定を決めておく
時間原価からの逆算
- 1時間あたりの目標単価を決める(例:¥3,000)
- ラフ〜納品までにかかる総工数を見積(例:6時間)
- 手間・見込み修正・プラットフォーム手数料・税金を加味(+30〜50%)
→ 最低受注額の例:¥3,000×6×1.4 ≒ ¥25,000
3プラン方式(目安)
- ライト:簡易ラフ1案、修正1回、背景なし(¥◯◯)
- スタンダード:ラフ2案、修正2回、簡易背景(¥◯◯)
- プレミアム:世界観提案、修正3回、描き込み背景(¥◯◯)
有料オプション
- 商用利用/著作権譲渡/ai学習可否/ラフ追加/特急対応/レイヤー分け納品
【失敗談】副業イラストレーターがハマりがちな落とし穴と対策
落とし穴1:納期が守れない
原因
- 見積もりが甘い/他案件とカブる/修正沼
対策
- 三点見積もり(楽観・最頻・悲観)で工数を決め、悲観見積もり+余白を納期に採用
- ガントチャートかカレンダーで可視化
- 進捗連絡はラフ提出時+本制作中間+納品前日の3回を固定
テンプレ:納期調整の早期連絡
〇〇です。◯◯案の描き込み工程に想定より時間が掛かっており、●/●(◯)納品に変更させてください。遅延に伴い、背景差分1点を無償追加します。ご迷惑をおかけし申し訳ありません。
落とし穴2:依頼者との認識のズレ
原因
- 口頭合意/参考画像なし/用途・サイズ未確定
対策
- 要件定義シートを最初に埋める
- NG例・OK例の画像を双方で確認
- 修正は回数ではなく内容(軽微/構図変更は別料金)で明確化
要件定義テンプレ(抜粋)
- 目的/使用媒体(SNS、印刷、グッズ、配信)
- サイズ/解像度/色空間
- ターゲット(年齢・性別・趣味嗜好)
- 必須要素(ポーズ、表情、衣装、ロゴ)
- 参考画像(OK/NG)
- スケジュール(ラフ日/中間確認/納品)
- 権利・利用範囲(商用/二次利用/AI学習可否)
- 料金・支払い(前払/後払、振込/決済)
- 修正の扱い(軽微の定義、構図変更の扱い)
落とし穴3:お金の話をあいまいにする
原因
- 「言いにくい」気持ち/後払い前提/見積書なし
対策
- 見積書→合意→着手金→制作の型にする(着手金20〜50%)
- 料金表は公開 or 事前提示
- 追加費用が発生する条件(例:構図変更・大幅リテイク)を文章で合意
ミニ合意メモ(DMでもOK)
◯◯様
依頼内容:◯◯イラスト(◯◯用途)
料金:¥◯◯(税別/税込)
スケジュール:ラフ●/●、納品●/●
修正:軽微2回まで/構図変更は別料金
支払い:着手金◯%、残金納品後◯日以内
利用範囲:◯◯(二次利用不可/可)
以上で問題なければ、返信にてご承認ください。
【超重要!】イラスト副業で知っておくべき税金の話
※以下は一般的なポイントです。状況により異なるため、最終判断は税務署や税理士など専門家に確認してください。
確定申告が必要な場合とは?
- 給与以外で得た副業収入が一定額を超える、または源泉徴収・年末調整で精算されない収入がある場合は、確定申告が必要になることがあります。
- たとえ所得税で申告不要ラインに収まるケースでも、住民税の申告が必要な場合があります。
- インボイス制度(適格請求書)への対応が必要かどうかは、取引先や売上規模、今後の方針で判断。請求書の記載事項や税区分は最新の制度を必ず確認。
経費として認められるもの(例)
- 画材・機材(ペンタブ、iPad、PC、ソフトウェアのサブスク)
- デザイン素材・フォント(商用利用可の範囲確認必須)
- 通信費・電気代の一部(家事按分)
- 書籍・参考資料・有料セミナー
- 取引に紐づく交通費・送料
- 取引手数料・プラットフォーム手数料
記録のコツ
- 領収書・明細は日付順に保管(クラウド保管推奨)
- 収入・支出は口座 or 決済を分けると記帳が楽
- 請求書番号と入金照合を同じルールで統一
わからないことは専門家に聞くのが一番
- 節税よりもまずルール順守と記帳の正確性。
- 年度末に慌てないよう、月次または週次で記帳。
- 判断に迷う費用や制度対応は、税理士へ初回相談(オンライン可)を検討。
すぐ使えるテンプレ&ツール
1) DM返信テンプレ(初回問い合わせ)
ご連絡ありがとうございます、〇〇です。
ご希望の用途・サイズ・納期・ご予算をお知らせください。
参考イメージがあれば、OK例とNG例を1点ずついただけると助かります。
ヒアリング後、ラフ案・スケジュール・お見積りをご提案します。
2) 見積書の基本項目
- 案件名/納品物/サイズ・点数
- 金額(本体/オプション/税)
- スケジュール
- 修正範囲
- 権利・利用範囲
- 支払い条件(着手金/振込期限)
- 見積有効期限
3) 請求書の基本項目
- 請求日/請求番号
- 請求先/差出人情報
- 内容(案件名・点数)
- 金額・内訳・振込先
- 支払期限
- (インボイス対応の有無・登録番号等は要確認)
4) 制作フロー・チェックリスト
- 依頼受領 → 要件定義 → 見積・合意 → 着手金 → ラフ → 中間確認 → 本制作 → 納品 → 請求 → アフターケア
「稼ぐコツ」をもう一段深掘り
コツ1:“用途”に強くなる
クライアントが買うのは「イラスト」ではなく「用途に効く解決」。
- 例)Vtuber立ち絵:Live2D前提のパーツ分けができる
- 例)広告バナー:CTRを上げる配色と余白がわかる
- 例)同人グッズ:印刷の限界と入稿データが正しい
コツ2:提案型コミュニケーション
「言われた通りに描く」だけだと代替されがち。
- +1提案を常に添える(背景差分、SNSサムネ最適、印刷用CMYK版)
- 「この用途なら、解像度は◯、比率は◯が良いですよ」と先回りサポート
コツ3:速度×安定
副業は時間が限られる。
- 工程のプリセット化(ブラシ/カラーパレット/レイヤー構成)
- チェックリスト化(納品前の透過・余白・文字アウトライン)
- 30分で出せる叩き台ラフで早期合意→リテイク減
コツ4:実績の見せ方
- Before/After、掲載許可が出たら成果指標も(例:予約数UP、いいね数UP)
- 「相談事例」としてストーリー化(依頼背景→課題→提案→解決)
コツ5:単価の上げ方(階段設計)
- 実績5件:最低料金の見直し
- 実績10件:ライトプランの廃止 or 値上げ
- 企業案件獲得:用途と成果を軸に再編集
- サービス化:パッケージ商品(例:配信者スターターパック)
最初の30日ロードマップ(保存推奨)
Week 1:基盤づくり
- 作品10点を3カテゴリに分けて整備
- ポートフォリオ1ページを公開
- 料金・納期・依頼導線を明記
- スキルマーケットに3商品出品
Week 2:発信開始
- SNSで週3投稿(完成/メイキング/依頼告知)
- ハッシュタグ研究(用途タグを3個固定)
- DMテンプレを用意
Week 3:営業&改善
- クラウドソーシングに指名応募を5件
- スキルマーケットの商品ページにQ&A追記
- 実績0→最初のレビュー獲得を目標に
Week 4:拡張
- BOOTH or SUZURIで1商品公開
- ストックサイトに5点登録
- 振り返り:反応のよい題材・価格・導線を数字で確認
よくある質問(ミニ)
Q. 実績がないのに価格を上げていい?
A. 「実績×用途の再現性」が示せればOK。工程の安定とビフォーアフターで信頼を補強。
Q. 断りたい依頼が来たら?
A. 速やかに、理由+代替案で丁寧に。
スケジュールの都合で難しいのですが、◯◯さんなら要件に合うと思います(@◯◯)。また機会があればぜひ。
Q. 盗用が怖い
A. 透かし、低解像度での公開、利用規約の明記、掲載時のクレジット指定で抑止。重大な場合は専門家へ。
失敗を減らすための「小さな仕組み」セット
- 依頼フォーム:用途、サイズ、納期、予算、参考画像、連絡先を必須化
- 自動返信:「◯営業日以内に返信します」+次のアクション
- プロジェクトナンバー:案件ごとに番号付与→請求・入金と紐づけ
- ファイル命名規則:
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- バックアップ:クラウド+ローカル二重化
小話:初めての「値上げ」
最初は「この価格で大丈夫かな」とビクビクしつつ提示。それでも「またお願いします」と言われ始めたタイミングで、思い切って20%だけ上げました。怖かったけど、結果は離反ほぼなし。理由は「コミュニケーションが楽」「納期が安定」「用途に合わせて提案してくれる」という非デザイン価値が評価されていたから。絵の上手さだけじゃない。仕事のしやすさも価値です。
まとめ:一歩踏み出せば、世界は変わる!
- マインドセット:仕事と趣味の違いを理解/完璧主義は捨てて公開/継続が力
- 稼ぎ方の選択肢:スキルマーケット/クラウドソーシング/SNS直受注/グッズ/ストック
- 準備:ポートフォリオ最小構成/発信の型化/工数逆算の料金設計
- 落とし穴回避:納期=悲観見積+余白/要件定義テンプレ/着手金と合意メモ
- 税金:記帳と証憑を整える。制度は最新情報を専門家と確認
最初の1件は、想像よりも近くにあります。完璧な準備より小さな公開。立ち止まるたびに、今日のチェックリストを1つだけクリアしてください。手が動けば、景色は変わる。
描けるあなたは、もう半分進んでいます。さあ、一緒に始めましょう。
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