そもそも何が違う? 液タブと板タブの基礎知識
「液タブと板タブ、何となく違いは分かるけど、結局どっちがいいの?」
最初にここがモヤモヤしていると、レビューを読めば読むほど沼にハマりますよね。
ざっくり言うと、
- 板タブ(ペンタブレット)
→ 画面はPCモニターを見る。机の上の“黒い板”をなぞって操作するタイプ。 - 液タブ(液晶ペンタブレット)
→ ペン先の下に絵が表示される。画面付きタブレットに直接描くタイプ。
どちらも「ペンの動き=カーソルの動き」という意味では同じですが、
価格・描き味・姿勢・スペース・配線の複雑さがまったく違います。
まずは、違いを一目で比較できる表を置いておきます。
(※価格帯は2025年時点のざっくりイメージです)
液タブ vs 板タブ 比較マトリクス(ぱっと見の違い)
| 項目 | 板タブ(ペンタブレット) | 液タブ(液晶ペンタブレット) |
|---|---|---|
| 価格の目安 | 入門機で数千円〜1万円台前半が中心。中級機でも1〜2万円台が多い。 | 小型でも2〜4万円台、大型や高性能機は5万円〜10万円超えも普通。 |
| 描き味 | 目線はモニター、手は板。慣れれば正確&肩が動かしやすい。 | 紙に描く感覚に近い。ペン先の真下に線が出るので直感的で迷いにくい。 |
| 姿勢・体の負担 | モニターを見ながら比較的まっすぐ座りやすく、首や背中に優しい。 | うつむき姿勢になりやすく、首・肩・腰がこりやすい。スタンドや高さ調整が必須。 |
| 設置スペース | 本体が薄くて小さい。キーボードの前に置いても机が狭くなりにくい。 | モニター+タブレット分のスペースが必要。13〜16インチでも“もう一枚モニター”を置く感覚。 |
| 配線・導入難易度 | USBケーブル1本でPCに接続、ドライバを入れれば基本OK。 | 電源+映像+USBなど複数本のケーブルが必要なことも多く、配線や設定がやや複雑。 |
| 耐久性 | 画面がないぶん構造がシンプルで壊れにくく、寿命も長め。 | 画面の焼き付き・傷・色ムラなど“モニター寿命”の影響を受ける。 |
ここから先は、
「実際に描くとどう感じるか」「初心者が挫折しにくいのはどっちか」を、
一人のイラストレーターとしての本音も交えながら、もう少し深く掘っていきます。
板タブ(ペンタブレット)の仕組みと特徴
板タブの基本構造
板タブは、画面のないペン入力専用の板です。
ペンで板の上をなぞると、PCモニター上のカーソルが動きます。
- 板タブ本体:入力エリア(描く範囲)+ショートカットボタン
- ペン:筆圧検知、傾き検知(対応モデルのみ)、充電不要のものも多い
- 接続:多くはUSBケーブル1本。無線対応モデルもあり
一番のポイントは、「見る場所」と「手元」が離れていること。
最初は違和感がありますが、慣れると“腕全体で線を引く”ようになるので、
むしろ線が伸びやすく、漫画やラフスケッチとの相性が良いと感じています。
液タブ(液晶ペンタブレット)の仕組みと特徴
液タブの基本構造
液タブは、画面付きのペンタブレットです。
液タブの画面自体がサブモニターになっていて、そこに直接描き込みます。
- 液晶画面:フルHD以上の解像度・色域があると快適
- ペン:筆圧・傾き検知+ペン側ボタン付きが主流
- 接続:電源ケーブル+HDMI/DisplayPort+USBなど複数本が必要なモデルが多い
「紙に描く感覚に近い」のが最大のメリット。
一方で、画面と目の距離が近くなり、うつむき姿勢になりやすいため、
首や肩への負担は板タブに比べてシビアです。
【板タブ】コスパ最強だけど慣れが必要? メリット・デメリット
メリット:安い・姿勢が楽・手元が隠れない
板タブの強みを一言でいうと、「コスパと健康」です。
- 価格が圧倒的に安い
入門機は数千円〜1万円台前半。中級クラスでも1〜2万円台が多く、
液タブよりはるかに入りやすい価格帯です。 - 姿勢が比較的まっすぐ保ちやすい
板タブを机に置き、真正面のモニターを見るので、
首を強く曲げずに描き続けられます。
Wacomのワークステーション解説でも、画面なしのタブレットは姿勢面で有利と述べられています。 - 手元で画面が隠れない
画面は別モニターなので、ペンを持っていても絵が隠れません。
“全体のバランスを確認しながら描きやすい”のは板タブの大きな魅力だと感じています。 - キーボードショートカットとの相性が良い
左手でショートカット、右手でペン、という配置がしやすく、
「Ctrl+Z」「ブラシ切り替え」などの操作がスムーズになります。
デメリット:画面と手元の乖離(慣れるまでの期間)
一方で、板タブを初めて使う人がほぼ全員つまずくポイントが、
「手元とカーソルが別の場所にある」ことによる違和感
です。
- ペンを動かしているのに、視線はモニター側
- 最初は「自分がどこをなぞっているのか」とても分かりづらい
- 線がカクカクしたり、狙った場所に描けなくてイラッとする
ここは正直、1〜2週間はガマンのゾーンです。
ただ、個人的な体感としては、
- 毎日30分〜1時間、ラフや落書きを描いていれば
- 1週間くらいで「脳が同期」してくる
という感じでした。
描いているうちに、「手の動き=画面の変化」が身体に染み込んできます。
板タブが向いている人の特徴
- 予算をできるだけ抑えたいけど、ちゃんと上達もしたい
- 肩こり・首こりが不安で、健康面を優先したい
- キーボードショートカットをよく使う、またはこれから覚えたい
- 「描くための環境」はシンプルな方が落ち着く
「板タブでも上手くなれないのでは?」と不安になるかもしれませんが、
プロでも板タブ派は普通にいますし、
メーカーの比較記事でも“予算重視の初心者はまず板タブから”というアドバイスが多く見られます。
【液タブ】直感操作だけど肩がこる? メリット・デメリット
メリット:紙と同じ感覚・線画が爆速になる
液タブの最大の魅力は、やはり「直感的で分かりやすい」こと。
- 紙に描いている感覚に近い
ペン先の真下に線が出るので、アナログから移行した人にはとても自然に感じられます。 - 細かい部分の描き込みがしやすい
拡大しながら、細い線やまつ毛、模様などを描くとき、
視線と手が同じ場所にあるのはかなり楽です。 - 線画のスピードが上がりやすい
個人的には、液タブに変えたとき、
ラフ〜線画までの時間が約2〜3割くらい短くなった感触があります。
「狙った位置に一発で線を置ける」ことの恩恵は大きいです。
デメリット:高い・姿勢が悪くなる・場所を取る
ただし、液タブはデメリットもハッキリしています。
- 価格が高い
小型でも2〜4万円台、本格派のサイズになると5〜10万円クラスも普通。
「学生の趣味」としては、かなり大きな投資です。 - 姿勢が悪くなりやすい
画面に顔を近づけて覗き込むような姿勢になりがちで、
首や背中に負担がかかるという指摘が各所でされています。
角度をつけるスタンドや、モニターアームで高さを上げるなど、
セットで“姿勢対策”を考える必要があります。 - 机のスペースを大きく専有する
13〜16インチの液タブを置くと、
「そこにもう一枚モニターが増えた」ような圧迫感が出ます。
小さい学習机だと、キーボード置き場が本気で困る問題が発生します。 - 配線がごちゃつきやすい
電源ケーブル、HDMI/DisplayPort、USB…と
複数本のケーブルが必要なモデルも多く、
取り回しが悪いと掃除や片付けが一気に面倒になります。
液タブが向いている人の特徴
- アナログの紙に描く感覚が好きで、そのままデジタルに持ち込みたい
- 細かい線画や装飾、背景をガッツリ描き込みたい
- 予算にある程度余裕があり、「描くこと」への投資と割り切れる
- 机のスペースや椅子・モニター環境をある程度自分で調整できる
カタログには載ってない!「生活環境」での比較ポイント【重要】
スペックや価格の話だけだと、どうしても決めきれません。
10代後半〜20代前半だと、
- 学生で一人暮らし or 実家
- 社会人1〜2年目でワンルーム
というケースが多いと思うので、生活目線でのチェックポイントを挙げます。
デスクの広さは十分?(キーボードどこ置く問題)
液タブを買ってから一番リアルに困るのが、
「キーボードとマウスどこ置く?」問題です。
- 板タブ
- モニターの手前に板タブ、そのさらに手前にキーボードを少し被せる配置も可能。
- 小さめの学習机でも、レイアウトの工夫でなんとかなることが多い。
- 液タブ
- 液タブ自体がモニター扱いになるので、その前にキーボードを置くと
→ 「キーボードに手が届かない」「液タブをまたがないといけない」状態になりがち。 - キーボードを左右どちらかにずらす、
折りたたみキーボードを使うなどの工夫が必要になります。
- 液タブ自体がモニター扱いになるので、その前にキーボードを置くと
「机が狭い」「奥行きがない」という場合は、
板タブの方が圧倒的にレイアウトの自由度が高いです。
配線の「地獄」に耐えられるか
液タブは、配線が一気に増えます。
- コンセントの口が足りない
- HDMIポートが埋まっていて、既存モニターがつなげない
- ケーブルが机の上を這ってストレスになる
このあたりにストレスを感じやすい性格なら、
「最初は板タブでシンプル構成」にしておいた方が、創作に集中しやすいと思います。
持ち運びや収納の手軽さ
- 板タブ
- 薄くて軽いモデルが多く、ノートPCと一緒にリュックに入れて持ち歩ける。
- 使わないときは本棚や引き出しにサッと立てかけておける。
- 液タブ
- サイズと重さ的に、「今日だけカフェに持っていこう」はなかなか難しい。
- 片付けも「画面に傷がつかないように…」と気を遣う。
「毎日机に出しっぱなしにできるか?」も、
地味ですが継続には効いてきます。
私の失敗談:板タブから液タブへ移行した時の「落とし穴」
ここからは、完全に自分の実体験です。
落とし穴1:液タブにテンション爆上がり → 首を痛める
初めて液タブを買ったとき、
「画面に直接描けるって最高!」とテンションが上がって、
気づいたら5〜6時間ぶっ通しでうつむき姿勢で描いていました。
数日後、
- 首の後ろがバキバキ
- 肩と背中もガチガチ
- 目も疲れて頭痛気味
さすがにこれはマズいと思い、
モニターの高さ調整や、20-20-20ルール(20分に20秒、6m先を見る)など
デジタル眼精疲労対策を調べて実践することになりました。
液タブを使うなら、
「姿勢+休憩」もセットで導入しないと危ない、というのを身をもって知りました。
落とし穴2:配線とスタンド沼で、結局板タブに戻る時間も多かった
液タブを設置したものの、
- 角度をどうするか
- キーボードはどこに置くか
- ケーブルを束ねるためのアイテムは何を買うか
など、「描く以外の設定」に気力を持っていかれてしまい、
締切前の修羅場では、
「もう今日だけは板タブでいいや…」と結局板タブに戻ることも多かったです。
この経験から、
「液タブ=絶対上位互換」ではない。
使い分けた方が、むしろ肩の力が抜ける。
という結論になりました。
【結論】タイプ別・あなたにおすすめなのはこっち!
予算重視&姿勢を守りたいなら「板タブ」
こんな人には、まず板タブを推します。
- 予算はできれば1〜2万円以内におさえたい
- 机が狭く、キーボードやノートPCも一緒に置く必要がある
- 首や肩こりが心配で、長時間の作業にも耐えたい
- 「PC作業に慣れてから液タブを検討したい」
板タブから始めるメリットは、「描く基礎+PC環境に慣れる」両方を安く体験できる点です。
メーカーの比較記事でも、初心者・学生には板タブが現実的という意見が多いです。
あと個人的には、
板タブで慣れておくと、
会社や学校のPCでも「マウスよりペン」の方が圧倒的に楽になる
という長期的なおまけもあると思っています。
スピード重視&アナログ感覚派なら「液タブ」
一方で、こういう人なら液タブもアリです。
- アナログの紙に描く感覚がとにかく好き
- 細かい装飾や背景をガンガン描き込みたい
- ある程度まとまった予算(3〜5万円以上)が確保できる
- 机や椅子の環境を自分で整えられる(スタンド・椅子・休憩の習慣含む)
液タブは、「描くことにどっぷり浸かりたい人」にとっては
すごく楽しい道具です。
ただし、姿勢・配線・スペース問題を“セットで解決する覚悟”は必要だと感じます。
まとめ:どちらを選んでも「描く人」が主役
最後に、ざっくりとまとめます。
- 板タブは
- コスパ最強
- 姿勢・健康面で有利
- 机が狭くてもなんとかなる
- 「慣れ」さえ超えれば、一生モノのスキルになる
- 液タブは
- 紙に近い描き味で直感的
- 線画や細部の描き込みが速くなる
- ただし高価で、スペース・配線・姿勢のハードルがある
そして何より伝えたいのは、
どっちを選んでも、
上手くなるかどうかを決めるのは「あなたがどれだけ描いたか」
という超シンプルな事実です。
「安い板タブだと上手くなれないんじゃ…」と心配するより、
“自分が毎日触りたくなる環境”を作れる方を選ぶのが、
長い目で見ると一番の近道だと思います。
もし迷っているなら、
- 机が狭い
- 予算がシビア
- PCもまだ慣れていない
この3つのうちどれか1つでも当てはまるなら、まずは板タブ。
数年後に「そろそろ液タブも試してみるか」と感じたとき、
板タブで積み上げた経験は、きっとそのまま活きてくれます。


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