クリエイターとして、自分の曲をできるだけ多くの人に聴いてもらいたい。
でも「どう投稿すれば広がるか」「著作権は大丈夫?」「収益化できるの?」と悩むことは多いと思います。
本記事では、SoundCloud・YouTube Shorts・TikTok という3大プラットフォームを舞台に、オリジナル曲を「バズらせる」ための 音源戦略 と、 著作権・原盤権など権利まわりの基礎知識 を、私の体験を交えてわかりやすく解説します。
本記事を読むメリット(得られること)
- 各プラットフォームの音源利用・収益化の仕組みが理解できる
- 投稿に適した尺・フォーマット戦略が掴める
- 著作権・原盤権・DRM の基礎を知り、安全に権利を守る投稿ができる
- 実際に私が失敗した経験も含めて「やってはいけない注意点」がわかる
ではまず、「SNSで曲を伸ばす」とは具体的にどういう意味があるのか、現代の課題も含めて見ていきましょう。
音楽クリエイターにとって「SNSで曲を伸ばす」とは?(目的と現代の課題)
なぜ SNS で曲を発信するのか?
私自身、制作した曲を SoundCloud に置きつつ、短尺動画プラットフォームにも音源を貼るようになってから、思わぬ拡散が生まれることが増えました。
バズった動画経由で曲がストリーミング配信サイトや SoundCloud 再生につながることもあり、「動画 × 音源」の相乗効果を肌で感じています。
SNSで曲を伸ばす主な目的は次のようなものです:
- 認知拡大:曲を知らない層に届く
- 流入誘導:動画プラットフォームから SoundCloud/配信先へ引き込む
- 収益化の可能性:DRM/Content ID を活用して使用料を得る
- ファン獲得:動画クリエイターとのコラボ依頼、カバー、リミックスの誘発
ただし、現代ではいくつかの課題・制約もあります。
現代の課題:音源利用・収益化・著作権
- 投稿プラットフォームが 音源利用ライブラリ を持つようになり、許可なし音源はミュート・削除の対象になることが増えている
- TikTok は 2025年7月の音楽ライセンス改定で、商用/宣伝用途で使える音源を限定する CML(Commercial Music Library)利用を義務付ける方向が出ています。
- SoundCloud などでは DRM/Content ID 連携の可否が曲の権利状態に依る(限定されたトラックだけ有効化できる)
- AI生成音源/サンプル素材の使用による権利あいまい性:プラットフォーム側が検出技術を強化しており、意図せず権利侵害と見なされるリスクも高まっている
- 短尺動画では音源の尺・最適フォーマット設計が強く影響するため、無計画な投稿では埋もれやすい
これらを踏まえつつ、次章では各プラットフォームごとの “音源利用・収益化” の仕組みを比較していきます。
【システム比較】3大プラットフォームの「音源利用」と「収益化」の仕組み
以下では、それぞれのプラットフォーム(SoundCloud、YouTube Shorts、TikTok)における音源利用と収益化・権利管理の仕組みを比較しながら解説します。
| プラットフォーム | 音源利用の特徴 | 収益化/権利・DRM連携 | メリット・注意点 |
|---|---|---|---|
| SoundCloud | オリジナル音源をアップロード可能。DRM/Content ID 連携も可能(条件あり) | SoundCloud for Artists(有料プランなど)でファン駆動型収益、Content ID 連携 | 自前の音源置き場として使える。だが、DRM未対応トラックは権利回収できない |
| YouTube Shorts | 音源付き動画を投稿できる。YouTube の Content ID が働く | 動画への収益分配(広告)+著作権料 | 動画と音源を一体で拡散できるが、著作権クレームやミュートリスクも高い |
| TikTok / Shorts (YouTube 版ショート機能) | 音源ライブラリとの連携、またはオリジナル音源を投稿可能 | TikTok:CML ルールにより商用投稿はライブラリ音源の使用が義務化する方向に | 拡散力が強いが、ルール遵守・事前登録が重要。音源がミュートされるリスクもある |
以下、各プラットフォームごとにさらに具体的なポイントを見ていきます。
SoundCloud における音源と収益化
私もまず SoundCloud を拠点に楽曲をアップロードし、そこを基点に動画用音源として切り出すことから始めました。
- DRM/Content ID 対応
SoundCloud が提供する DRM(著作権管理)機能を使うと、YouTube/Instagram/TikTok などで使用された際に自動で使用量を回収可能にできます。
ただし、すべてのトラックで有効化できるわけではなく、使用素材やサンプルの権利形態などが影響します。 - ファン駆動型収益
SoundCloud には「Fan-powered Royalties(ファン駆動型収益)」という仕組みがあります。フォロワーや再生者のアクティブ度合いで支払いが変わる方式です。 - 制限・課題
・DRM 対応できないトラックは、他プラットフォームで使用されても収益化できない
・SoundCloud 上でしか認知が留まりがち
・無料プランだとアップロード時間制限や機能制限あり
YouTube Shorts における音源と著作権
YouTube は動画プラットフォームとしての土台が強いため、Shorts を使った音源拡散にも期待できます。ただし、著作権対応が特に厳しい世界でもあります。
- Content ID の動き
YouTube の Content ID は投稿された動画音源を網羅的にチェックし、著作権違反と見なされるとミュート、収益没収、削除の対象になります。
オリジナル曲を使う場合は、配信時に Content ID 対応を有効化するなどの設定が必要です(SoundCloud との DRM 連携がこれを助ける) - ショート動画としての適性
短尺形式(15~60秒程度)が主流なため、曲のコアな部分を使うか、キャッチーなフックを切り取ってショート用に編集することが鍵です。 - 収益分配
動画に広告が付くことで、再生回数・視聴維持率などを通じて収益が生み出されます。ただし、著作権トラブルがあると広告収入が制限されます。 - 注意点
AI や BGM 混入音源を分離する技術研究も進んでおり、プラットフォームは不見逃し検出を強化しています。
ミュート・クレーム回避のために、音源登録・権利明示は必須といえるでしょう。
TikTok における音源利用と最新ライセンスルール(2025年)
TikTok は「バズらせる力」が強く、音源付き投稿が爆発的に拡散する可能性があります。ただし、最近のルール改定には注意が必要です。
- 2025年7月の音楽ライセンス改定
TikTok は商用/ブランド用途の投稿において、従来のトレンド音源だけでなく、専用の Commercial Music Library(CML)使用を義務付ける方向に動いています。
つまり、企業案件・宣伝投稿ではトレンド曲や一般音源を使うと、動画がミュートされたり削除されたりするリスクがあります。 - 音源の二重ライセンス制限
CML の音源は TikTok 上での利用に限定され、他プラットフォームに投稿する場合には別途ライセンスが必要という条項も含まれています。 - 著作権違反リスク
無許可音源や未登録音源を背景に使うと、動画がミュート、クレーム、または削除される可能性があります。
TikTok は著作権ポリシーを常にアップデートしており、ルール違反には敏感です。 - 拡散力と発見性
TikTok は音源と動画が直結するため、作品と映像がマッチすると拡散性が非常に高くなります。ただし、投稿設計(尺・フック・サウンド編集)が成功を左右します。
オリジナル曲を伸ばすための「音源戦略」:尺とフォーマットの最適解
プラットフォームごとのルールを理解したうえで、実際に「どの部分を使うか」「どの尺にするか」「どの形式で投稿するか」が、拡散を左右します。以下、私が過去の試行錯誤を通じて学んだ戦略を紹介します。
最適尺(秒数)戦略
| プラットフォーム | 推奨尺 | ポイント |
|---|---|---|
| TikTok | 9〜30秒を意識 | 初動で視聴を引きつけるフック部分を使う |
| Shorts | 15〜60秒 | コード進行やサビを切り取りつつ、視聴維持を意識 |
| SoundCloud | フル・ショート両対応 | フル曲も登録、短尺を切り出して拡散誘導用に使う |
- “引きの強いフック”を先頭に:最初の 3~5秒で聴き手を掴むメロディや音質設計を意識
- 繰り返し要素を活用:サビ・フレーズを繰り返す構成にして印象を残す
- 音量・ミックス調整:ラウドネス正規化・ノーマライズで他動画と音量バラツキを減らす
- ループ対応:短尺ループ再生されやすい設計にすると効果的(フェードイン・アウト処理含む)
フォーマット戦略(音源形式・編集設計)
- ステレオwav/高品質 mp3:音質劣化を避ける
- イントロカット版:無音部分を削ってイントロ直後 ≒ 15〜30秒に編集
- ループ可能版:無音なしで終わる/始まるよう編集
- BGM ミックス版:静かなパートを背景音素材として使えるよう分けて提供
投稿設計(動画と同期させる工夫)
- 音源を使った動画で 波形可視化+歌詞/歌詞断片表示
- 歌詞ワードをキャッチに使う: “好きだよ”“夜明け” など感情に寄る言葉
- ビジュアル連動:音の強弱に合わせた映像エフェクト(発光、ズームなど)
- イントロ引き伸ばし/スローモーション結び:動画の始まりや終わりを引き延ばして余韻を出す
このように、音源そのものだけでなく、編集・構成を含めた投稿設計が肝となります。
権利関係の基礎知識:著作権・原盤権を理解して収益を確保する
オリジナル曲を安心して投稿し、収益につなげるためには、著作権や原盤権、DRM/Content ID といった制度を正しく理解することが不可欠です。以下は私自身が何度もハードルを感じた部分を含めて、初心者にもわかるように解説します。
著作権 vs 原盤権 – 基本の理解
- 著作権(作曲・作詞権、編集権など含む)
曲のメロディ・歌詞・構成など「創作されたもの」に自動的に発生 - 原盤権(録音権、マスターレコード権)
その曲を録音した「音源(マスタートラック)」そのものに対して発生
たとえば、あなたがメロディを作り、歌詞を書き、録音・ミックスしてマスターデータを作ったなら、あなたは著作権と原盤権の両方を持つ可能性があります。
DRM/Content ID とは何か?
- DRM(Digital Rights Management):プラットフォーム上で著作権を保護・管理する技術
- Content ID:YouTube などで使われる、投稿された動画に含まれる音源を自動検知し、著作権者に収益を配分するシステム
SoundCloud の場合、Distribution(配信)をする際に DRM/Content ID の選択肢があり、適用可能なトラックだけ有効化できます。
ただし、サンプル使用・権利が不明確な素材を含む場合、DRM 対応不可になることもあります。
権利クリアランス(許諾)とサンプル使用
- サンプルを使う場合は、 明示的なライセンスを得ること が必須
- 無料/ロイヤリティフリーと謳われる素材でも、商用利用や二次配布が制限されているケースが多い
- 複数作品で使われているサンプルは Content ID で他人と権利競合する可能性あり
- Reddit上では「Splice サンプルを使った曲は Content ID 対応できない」旨の議論も見られます。
権利不備リスクと対応策
- 許諾されていない著作物利用 → 投稿削除・ミュート・著作権クレーム
- 権利元からの削除要求や訴訟リスク
- 音源が他プラットフォームで使われても収益が回収できない
対応策:
- オリジナル素材を中心に制作する
- 使用サンプル素材には商用ライセンスを取得する
- 配信/投稿時に権利情報を正確に記載する
- DRM/Content ID を有効化可能なトラックを優先する
- 音源登録サービス(配信業者など)が権利対応してくれるか確認する
失敗しないための注意点:著作権侵害リスクと、ディストリビューションの重要性
私自身、最初の頃に「アップロードすれば広がるだろう」と甘く見て、権利関係を怠ったことで痛い目を見た経験があります。ここでは、それらをもとに「やってはいけないこと」や注意点をまとめます。
1. 権利あいまいな素材を使って投稿 → ミュート・削除
たとえば、無料サンプルやネット上から拾った音源、他人曲のコーラスの切り出しなどを使うと、プラットフォームの自動検知システムに引っかかりやすくなります。
2. 無許可音源を使った動画宣伝投稿が CML ルール違反に
TikTok のように商用利用を厳しく管理するプラットフォームでは、宣伝投稿に無許可音源を使っていると動画がミュート・削除されたり、アカウント制限を受けるケースがあります。
3. 配信/投稿先での権利登録忘れ
SoundCloud 側で DRM 有効化を忘れたり、YouTube 側で Content ID 登録をしなかったりすると、拡散先で収益化の道が閉ざされることがあります。
4. 拡散だけ狙って質を疎かにする
音質が悪い、編集粗い、尺が中途半端、メタデータ未整備などは、せっかく拡散されても次のステップにつながりにくくします。
5. ディストリビューション業者の契約条項を見落とす
音源をストリーミング配信する業者を通す際、業者側が DRM/Content ID 権利を握ってしまう契約になっているケースもあります。契約条項をよく確認しましょう。
まとめ:あなたの曲を「音源化」し、世界に届ける次の一歩
ここまでご紹介してきた内容を振り返ります。
- SNS × 音源投稿で得られる「認知・流入・収益・ファン獲得」の可能性
- SoundCloud, Shorts, TikTok の音源利用・収益化の仕組みの相違点
- 尺戦略・フォーマット設計は拡散を左右する重要要素
- 著作権・原盤権・DRM/Content ID の基本知識と、適切な運用
- 失敗しやすい権利あいまい素材使用、契約甘さ、配信忘れなどの注意点
あなたの曲には、まだ出会っていない聴き手がたくさんいます。
まずは短尺で「聴かせる部分」を設計して投稿し、反応を見ながら改善しましょう。
権利を守りつつ、クリエイティブを最大限に活かす投稿設計を意識することで、音源はただのデータではなく「資産」になります。


コメント